コラム
1. 技術士一次・二次試験 勉強方法
佐藤 悟 (技術士<建設部門>)
2. 技術士一次試験・米国FE試験 勉強方法
武内 晋哉 (技術士補<情報工学部門>, EIT <California>)
3. 学位授与機構にて学士(学芸-科学技術研究)取得をした記録
伏見 靖
1. 技術士試験について
技術士という資格の名前は、大学生の頃から知っていました。大学に技術士一次試験のポスターが貼ってありました。また、授業で一部の先生が技術職の仕事をしていくには技術士を取得した方が良いという話をしてくれる方もいました。
ただし、学生の頃は技術士の1次試験には興味を持つことはありませんでした。JABEE認定でない大学のコースで、学生の内から技術士1次試験の取得を目指す人もいらっしゃいますが、私から見ると大変勉強熱心なことだと思います。
私の場合は、技術士の一次試験は建設会社に就職してから4年たった2004年度に受験しました。会社が推奨している資格なので、受験しました。勉強方法は、過去の問題集を買ってきて、半年ぐらい勉強したと思います。私の場合、1次試験はそれほど努力しなくても合格できました。それは、大学での勉強も真面目にやって来たのですし、技術者としても真剣に仕事に向き合ってきたからだと思います。
受験した年は、2次試験を受けるためには、1次試験に合格していることを義務付けた年でした。会社の上司の課長で、40代の人が受験していていました。あのぐらいの年齢になって、試験を受験するのは大変だなと思いました。(現実には私も2次試験に合格するのは、そのぐらいの年になってからになってしまいました。)
2. 技術士1次試験の勉強方法
私の場合は、技術士1次試験は、それほど努力しなくても合格できました。実際には、個人によって基礎学力が違うことや、あまり日常の業務で実務経験が積めない人もいらっしゃるのが現実でしょう。
択一式の試験の勉強方法は、繰り返し問題を解いて正答の制度を上げていくことです。問題集を買ってみて、「解いてみる」→「解説などを読んで勉強する」→「また問題を解いてみる」を繰り返すことです。その際に、問題を3つに分けて考えましょう。確実に解ける問題と、努力すれば何とかなりそうな問題、努力しても無理そうな問題です。そして努力すれば何とかなりそうな問題の勉強に注力すればよいのです。
これは、技術士1次試験以外の択一式の試験対策にも役立つ勉強方法です。
3. 技術士2次試験の勉強方法について、基礎学力を養うには1
「意識して仕事をしましょう」
技術士の2次試験の勉強方法について書きます。まず、基礎学力が無いと合格できません。その基礎学力の養い方について書きます。
技術士の2次試験は、技術職としての実務経験が無いと取れません。したがって単純作業でなくて、技術職として働いていることを前提として書きます。
これはよく言われることですが、「意識して仕事」をしなければ、技術力は身に付きません。まあ、入職したばかりの新入社員であれば、上司の指示で仕事をするのはあるのかもしれませんが・・・言われたとおりに仕事をするのではなくて、分からない用語があれば自分で調べる努力をするとか。仕事で疑問に思ったことは、基準書などを読んで理解するような努力をしなければなりません。
自分で勉強をする習慣を付けなければなりません。目の前の仕事に追われてスキルアップどころではない方もいらっしゃるのかもしれませんが、仕事に慣れて来たら意識して勉強するようにしましょう。
上記のことは、技術士の資格を取得するしないに、関わらず、技術職として仕事をしていく上で必須のことです。
4. 技術士2次試験の勉強方法について、基礎学力を養うには2
「文章を書くことに慣れましょう」
2007年度ぐらいから技術士試験の勉強を始めました。ネックになったのは、文章を書くのに慣れていないことです。基準書・専門雑誌・新聞などを写すことを始めました。他の人に聞いても初めは、他の人が書いた文章を書き写すことから始める人も多いようです。
もちろん、仕事の都合で、報告書や学術論文などを書く機会が多い人は、そうした機会を利用すべきです。しかし、技術職でもそうした機会に慣れていない人は、意識して練習するしかありません。
また、個人の好き嫌いもあるので無理には勧めませんが、個人ブログなどで文章を投稿することや、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトで回答を投稿することなども文章を書く練習になります。
5. 技術士2次試験の勉強方法について、基礎学力を養うには3
「技術士以外の資格にも挑戦しましょう」
専門分野にもよるのかもしれませんが、技術士以外の資格の受験勉強で得られた知識などが技術士試験で役立つこともあります。
私の場合は技術士2次試験に合格するまでに、コンクリート技士、ビオトープ管理士、RCCM試験等に合格するために勉強したことが、技術士資格取得に役立ったと思います。
現在、私は、建設部門の2科目目のコンクリートでの受験を考えています。コンクリート診断士やコンクリート主任技士の勉強をしています。
6. 技術士2次試験の勉強方法について、基礎学力を養うには4
「講習会や動画の配信などを活用しましょう」
講習会等には積極的に参加するようにしましょう。会社の業務として講習会に行ける人は積極的に活用しましょう。会社の業務でなくても、休日などに自己啓発の目的でも講習会に参加しましょう。コロナの影響で、オンラインやオンデマンドの配信が増えています。こうした機会は積極的に利用しましょう。
講習会でなくても、YouTube等にいろいろな技術の動画や技術士試験のための動画を上げてくれる人もいます。そういう動画も活用しましょう。
7. 技術士2次試験の勉強方法について、試験対策1
「キーワードの整理」
受験する部門や選択科目に関するキーワードを整理しましょう。私の場合は建設部門を港湾及び空港で受けていたので、港湾及び空港に関するキーワードを100個ぐらい整理しました。整理と言ってもA4の用紙1枚にただ書いただけです。整理の方法は、いろいろあるようです。自分に合った方法を見つけましょう。
私が合格した年は、必須科目は択一式でしたが、現在は、必須問題も論文を書かせるようになっていますので必須問題についてもキーワードを整理しておくと良いです。
8. 技術士2次試験の勉強方法について、試験対策2
「論文の構成を練ってから書き出すトレーニング」
まず、内容はともかく題意に沿って回答するようにしましょう。私も何年も受験会場に行って思いつくまま回答を書いていました。そうではなくて、論文の構成を考えてから書き出すようにしましょう。最低でも目次と書く内容のメモを作ってから、書き始めましょう。問題文で問題点を3つ挙げろと言ったら回答で必ず3つあげることです。そうしたことができていない回答は多いですし、私も特に初期の受験ではそうだったと思います。論文の構成を考える方法には、骨子法という方法もあるようです。
9. 技術士2次試験の勉強方法について、試験対策3
「試験を受験したら回答を再現しましょう」
回答を再現する意味は、筆記試験に合格して口頭試験に呼ばれた場合、特に問題Ⅲの内容については、口頭試験で聞かれる可能性があることが一つです。
もう一つは、不合格であった場合に何が、原因で不合格なのか分析できます。
天空技術士会 初代会長 武内 晋哉
技術士補 (情報工学部門), EIT (California)
2023/1/22
1. 技術士という存在を知ったのは、いつか?
私は、技術士という存在は物心がついた頃に知りました。身近な人が技術士だったからです。 (老衰により、既に亡くなっています)
2. 幼少期~高校までの日常
私は、幼稚園~小学校低学年まで、米国にいた帰国子女です。なので、海外系の人の、主に日本の大学入試の勉強の参考にも、なるのではないかと思い、書きます。
幼稚園の時は宇宙飛行士になりたいと言い、小学校低学年~中学年の時にエジソンのような発明家になりたいとか述べて、そういった事を学校の掲示板の新聞に書いたり、ゲームをやっていた関係でプログラマーになりたいと言ったりしていました。宇宙飛行士は七夕の短冊に確か書いたのと、プログラマーは授業参観の時にあった将来なりたい職業の発表会で話しました。
中学受験をして、医学部に行く人が多いようなところに入りました(当時、そういった学校だとは知らずに入りました)けど、個人的にいって、前述のように、宇宙飛行士や発明家、プログラマーになりたかった訳ですから、高1~2の時は日米の航空宇宙系の学科(パイロット養成コースがあるもの)や、機械システム系の学科について調べたり見学したりしました。
ちなみに、中3~高1の時は、WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)を視聴したり、『日経会社情報』を見たりしながら、バーチャル株取引をしていました。印象的なのは、『金持ち父さん貧乏父さん』という本や、『チーズはどこへ消えた』といった本を読んだ事です。高2の時は、地理のレポートで、「日米の半導体産業」について調べてまとめました。自由な学校なので、マリオ・ワリオ系のゲームやゼルダの伝説、クロノトリガー、ポケモン(初代+金銀)、パワフルプロ野球、エースコンバット、バイオハザード系のゲームを延々とやっても、いました。中学テニス部の活動で、夏休みが終わる10日前位まで、鉛筆とかシャーペンを恐らく握っておらず、それらの握り方を忘れそうになる程でした。
※ エースコンバットとかバイオハザード系のゲームは、ずっと前から、やっていません。念のためですが
高3の時は、フルブライト協会の説明を聞いたり、大手予備校の大学入試模試を受けたら何故か向こうから案内が来たので、米国大学機構に見にいったりしていました。
ここで、地道にやれば、よいのに、焦って勉強を沢山してしまい、体調を崩しました。日米両方を狙っておいて、中途半端だったというのが、大きいかと思います。
結局、機械系の国立や私大を受けましたけど、農工大の情報コミュニケーション工学科に入る事に、なりました。
受験した大学は次の通りです。
・ 東北大のセンター利用試験(機械系; 足切り)
・ 農工大(第1志望が機械系、第2志望が情報系)
・ 早大(理工系)
・ 慶大(理工系・経済学部)
・ 理科大(工学部<神楽坂>)
・ 青山学院大学(機械系)
・ 工学院大学のセンター利用試験(確かJABEEかグローバル・エンジニアリング学科みたいなところ?)
このうち、農工大の情報コミュニケーション工学科と工学院大学のみに、受かりました。工学院大学について、ロボット関係の事が盛んだと思ったのと、新宿キャンパスのビルに通うのが、カッコいいと思って、興味が、あり悩みましたけど、学費が安くて、自宅から至近距離といってよい、農工大に進学する事に、しました。
3. 大学在学中の話 (工学系の勉強が出来なかったという話)
大学在学中は、まず、硬式野球部に入りました。他の人たちは実験とかで、プログラミングの勉強をしている中、野球の練習を週5日して、1日試合のペースだったのですが、体調的に勉強に集中できる感じでなかったですし、ついていけなくなっていました。
その時代、自「転」車で浅草や、お台場に行って、日本科学未来館に行ったり、電機メーカーの展示場を見たり、成田空港や羽田空港に行っていました。台北にも、旅行しました。
興味が、あるので、医師国家試験の過去問について、精神系の部分だけを解きました。ネット上にある、『一般人向けの』精神医療知識テストみたいなサイトが、あったので、大学1年時に解いたら、確か、精神医療知識が、臨床研修医2年目レベルと出ました。まあ、そのサイト自体が、信憑性があるのかどうか、分からないですし、今、あるのかどうかも、分からないですが…
それ以外は、TOEICを受験して、880/990点取ったり、初級システムアドミニストレータ試験(現ITパスポート)に合格したりです。
4. 技術士一次試験受験前の話 (準備)
私の場合は、技術士一次試験は就職前に受けました。といっても、大卒と就職の間には一定のブランクがあります。
それはそうと、大卒後に、自分が、日本の一般人と馴染めないのと、日本の普通の学校の、普通の勉強が出来ず試験問題が解けないのは、要するに国語(日本語)が出来ないからだ、と今更、気がつきました。昔、歴史の先生が、英語が出来なかったが、浪人してから中1の基礎英語から、やり直して、確か優秀な大学に入ったといった話をしてもいました。
それを思い出して、中学受験レベルの国語(日本語)の問題集を解くところから、国家公務員1種試験の問題集を解くところまで、総復習しました。 (別に、公務員に、絶対に、なりたくて解いていた感じでは無いですが… )
それ以外にも、独立行政法人等職員試験の問題集を全て、解きました。数的・判断推理「以外」は、7割取れるようになったのではないかと思います。 (数的・判断推理が、多分配点も高いですし、それが一番出来なかったですが、やる気が無かったです)
その後、薬剤師・精神保健福祉士(PSW)・臨床心理士の資格試験過去問を、買って、読んで「脳内で」解いていました。 (薬剤師国家試験は、ほぼ全く分かりませんでしたが)
『外資系企業が欲しがる脳みそ』みたいな本も、読みました。
すると、それ位の時点で、結局、そういった過去問とかは、情報で出来ているというより、現代社会を科学技術を用いて解析すると、「情報が世の中を占めている割合が強い」のではないか?と思いました。
そして、大学の同級生の多くが、SE(システム・エンジニア)になったように、「自分も、情報産業に携わる、SEになりたい」と、今更、強く思いました。
(それまで、周囲の日本人を見ていて、SEというのは、ゲームとかアニメのヲタクの集まりだと勘違いしていました)
ブランクも、あったので、手っ取り早く評価されるように、
日本最高峰の理工系資格とされる、技術士を目指す事を強く決意しました。 (理工系の最高峰資格は、技術士と博士らしいです)
5. 技術士一次試験の勉強方法
受かった年の結果:
基礎科目・・・15/15点 (満点)
適性科目・・・12/15点
専門科目・・・32/50点 (情報工学部門)
–
2年目で受かっています。
1年目は、どういった感じなのかを探るために、受けた感が、あります。
何故か、その時の記憶とか、そんな無いですけど、勉強とか、そんな出来なかったのではないかと思います。
正確には、何をしていたのかは、覚えていますけど、技術士試験のために何の勉強をしていたのかは、あまりハッキリとはしていません。
ネットで問題集に関連する情報を調べたり、マンガで分かる技術シリーズや、eco検定といったものを見たり、脳内で解いていた記憶等が、ある気がしています。
(1年目の、基礎と適性が、どうだったのかは、分からないですが、専門科目がダメでした)
当時、私には、お金が無かったですが、2年目で、新技術開発センターの技術士一次試験対策講座を思い切って取りました。
放送大学大学院の情報学プログラム(修士選科生)を履修し始めたのも、1年目か2年目だと思います。知的創造サイクルの法システムと、基礎情報科学だけ取れました。
自分で講座代を払うのと、他人(学校とか会社とか?)が講座代を払うのとで、勉強のモチベーション的に違くなると個人的には思います。
まるで、その講座の宣伝ですが、今は、どうなっているのかは知らないですけど、技術士試験対策講座で言われているような事を、全て実施したり、放送大院の情報学PG + α の勉強をしていけば、普通に一次試験には受かると思います。
(私は、その講座の主催者や、そこから、お金を出されたりしているインフルエンサーでは、ないです)
その講座で出品される、基礎と適性科目の問題集を、「延々と」「何度も何度も」解く、専門科目の添削問題を分からなくても強引に?解いて締切までに提出するといった事をしました。また、対策講座には、技術士の先生と通信出来るサービスが、あったのと、他に技術士試験合格を目指す人とかが、自分の周りには、いなかったため、結構やり取りしたと個人的には、思います。
過去問で一度でも合格点が取れたら、合格するという言葉を信じてやっていたら、確か、夏位で、取れました。なので、もう受かると更に信じて、試験の時に、ベストかそれに近いコンディションにするために、運動や気分転換しつつ、勉強したところ、受かりました。
6. 米国FE試験の存在を知ったのは、いつか?
技術士一次試験に合格してから、技術士会にある、修習技術者研修会というモノに通年で、参加していた時に、知りました。
まず、米国PE試験を日本にいても受けられるといった事や、米国FE試験の存在については、その時まで、知らなかったです。
7. 米国FE試験の勉強方法
何と、4回目?で受かりました。
ちなみに、大学1年の時に、TOEIC を受験したところ、本番で880/990点でしたが、
その時に、自宅で問題集を解いていた時は、930~960点の事の方が、多かったです。
英語力が無いから受からなかったというだけでなく、範囲がかなり広くて難易度も高いからだと思います。
結局は、対策用の問題集を解いたり、対策用のクラウドサービス(有料)を使いました。
詳細は、長くなるので、コチラを、ご参照ください。
伏見 靖
2025/9/23
1. 概要
(1)はじめに
私は、2017年4月期(平成29年)において、独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(以下、学位授与機構)に対して学位授与申請を行い、学士(学芸)を取得しましたので、その経緯をご紹介します。
追って説明しますが、学位授与申請で重要なのは、①単位取得、②学修レポートの提出、③論文試験の受験の3つです。
なお、これから紹介する制度や名称等は、全て取得時のものであり、現在のものと異なることがありますので、実際に単位取得や申請を行う際には、学位授与機構の公式サイト等で必ず最新の情報を確認するようにしてください。
(2)学位授与機構とは
学位授与機構は、短期大学・専門学校卒業者や、大学中退者(条件:大学に2年以上在籍、かつ、62単位以上取得済)等に対し、追加の学修による単位修得を経た上で所定の手続を行うことで、学士号を授与する事業(本稿において学位授与制度と称します)、及び、文科省所管以外の大学校卒業生に学士号等を授与する事業を行っています。
なお、学位授与機構は、上述した学位授与の他、大学改革支援(大学や短大など高等教育機関の評価・認証事業を行い、教育の質の保証や改善を行う)や、研究活動(高等教育制度や学位制度に関する調査研究を実施し、その成果を大学などに還元する)等の事業を行っています。今回、こちらは関係ありません。
(3)学士号取得に至るきっかけ
私は既に大学を2つ卒業しており、2つの学士号(工学・法学)を取得済なので、わざわざ追加の学士号を取得したところでメリットはありません。
しかし、ネット上の情報を見ていると、学位授与制度を使って複数の学士号を取得している方がいることを知り、損得勘定抜きの知的探求心のみで自分も挑戦してみようという気持ちになりました。
なお、大学卒業者は、前述した「大学中退者」の条件を当然に満たしているので、既に学士を取得した人も利用できます。
2.学士号取得のための準備
(1)取得する学士号の種類の選定
学位授与申請に際しては、どの学問分野の学士号を取得するかを決める必要があります。
学位授与機構において取得できる学士号の種類(専攻の区分)として、文学・経済学・農学等が約30種類近くあり、専攻によってさらに細分化されているので、実質60種類程度にわたることになります。
この中から自分の興味に応じた適切な学問領域を選びます。
私の場合は、工学系出身で知的財産関連の仕事をしているので、これに関わる学問分野で考えました。
既に法学の学士号は持っているので、その両方に関わる分野が望ましいです。
一方、学位授与機構で学士号を取得する場合は、合計124単位以上を取得する必要がありますが、学問分野によって必要な単位が異なり、また、取得済の単位は利用できることから、まずはできるだけ追加の単位取得数が少なく負担が軽いものを選ぶことにしました。
ネット上の情報では、既に何らかの学士号を取得している場合、少ない単位取得で学士号取得できる学問分野として、学士(学芸-科学技術研究)、学士(社会科学)、及び、学士(理学-総合理学)が挙げられていました。
これらは、学際的な学問分野であり、特定の学問分野に特化せずに、広く単位を認めているため、取得済の単位を活用しやすいのです。
以上の観点から、学士(学芸-科学技術研究)の取得するのが最も適切だと判断しました。
(2)取得すべき単位の確認
学士(学芸-科学技術研究)は、一般教養の単位や工学専門の単位に加えて、「科学技術に関する科目(8単位分)」が必要となります。「科学技術に関する科目」の例として挙げられていたのは、「科学論、自然科学概論、科学史(個別科学史を含む)、科学哲学、科学教育、科学社会学、技術史(個別技術史を含む)、技術論、技術教育、科学技術政策、科学技術倫理、科学技術と社会」です。
科目の名称は、多少異なっていても、科学技術に関する科目として取り扱うとのことです。
私の場合、出身大学(理工学部)において、「知的財産概論(2単位)」を履修していましたが、これが「科学技術に関する科目」に該当するかどうかが微妙なため、安全のため新たに8単位を履修することにしました。
(3)放送大学で不足単位の履修
前述した「科学技術に関する科目」が開講されている大学として、放送大学が適当と思われたので、さっそく放送大学の選科履修生として出願し、科学技術論4科目8単位の履修申告を行いました。
・社会技術概論 2単位
・情報社会の法と倫理 2単位
・情報のセキュリティと倫理 2単位
・新しい時代の技術者倫理 2単位
なお、これらの科目が学位授与機構で想定する「科学技術に関する科目」に該当するかどうかは学位授与機構や放送大学に対して確認することができないため、自己責任で判断することになります。
放送大学の4科目については、通信課題の提出、単位修得試験の受験を経て、無事に4科目(8単位)分の「科学技術に関する科目」を修得することできました。
学位申請に必要な単位が揃ったことになり、冒頭で述べた重要事項のうち、①単位取得が満たされました。
3.学士号取得のための申請手続
(1)必要書類の収集
申請にあたっては、「住民票」、卒業した大学の「卒業証明書」及び「成績証明書」、放送大学の「単位取得証明書」を取り寄せます。
この他、申請に用いるための最新の「新しい学士への途」及び「学位授与申請書類」を取り寄せます。
これらは公式サイトからダウンロードできますが、「学位授与申請書類」は印刷された冊子が必要なので、学位授与機構に申し込みます。
(2)学修レポートの作成
ここで、次の重要事項の②学修レポートの提出に取り掛かります。
ここが最大の山場でしょう。
学修レポートは、学位の取得を希望する専攻区分に対応した特定のテーマ(課題)についての学修の成果です。課題については、学士(学芸-科学技術研究)の単位取得に関わる専門科目に対応する内容から、自分で設定する必要があります。
ざっくり言うと「卒業論文」に該当します。このため、「卒業論文」を書いたことがある方であれば、イメージはつくでしょう。
私の場合は、知的財産に関する仕事をしていますので、知的財産に関する文献は既に多数保有しており、また仕事において直接的に課題に感じていることがあったので、テーマ概要は割と早めに決まりました。
情報収集に3ヶ月程度、執筆には2週間程度かけました。
知的財産法制度は法学の一分野であるため、法学部でのレポート作成や卒論執筆の経験が役立ちました。
学修レポートの概要(目次)は下記の通りです。なお、学修レポートは約17,000字(参考文献含まず)です。私が取り上げたテーマについては現在も研究を継続しているので、伏字とさせてください。
テーマ:「特許法〇〇条に規定する〇〇制度についての考察」
第1章 序論
第1節 はじめに
第2節 問題の背景
第2章 〇〇制度
第1節 特許法の〇〇制度の概観
第2節 〇〇制度
第3章 〇〇制度
第1節 〇〇制度の意義
第2節 〇〇制度の沿革
第3節 〇〇制度についての審査基準
第4節 〇〇制度に関する裁判例
第5節 〇〇制度に関する諸問題
第6節 〇〇制度と〇〇制度との関係
第4章 考察
第1節 〇〇制度の判断基準
第2節 おわりに
参考文献
(3)申請手続
申請書類はオンラインで作成します(当時は手書きもOKでした)。
前述した「学位授与申請書類」には、学位授与機構の申請システムにログインするためのID・パスワードが記載されているので、これらを入力します。
住所氏名等の個人情報の他、専攻区分、学修レポートのテーマ等を入力し、取得済の単位の入力を行います。これらは非常に面倒なので、全て書類やデータが揃ってから行った方が良いでしょう。
特に成績証明書の単位取得年度が西暦で書かれているのに、申請システムは年号で入力しなければならなかったので、西暦・年号対照表を印刷してモニタに貼り付けて間違いがないようにしました。
申請システムで作成した申請書類は印刷し、上述した必要書類と、指定部数印刷した学修レポートをまとめて書留郵便にて郵送します。
学修レポートには、要約も必要となります。(現行のシステムはかなりオンラインで済むところがあるかと思います)
申請してから、1ヶ月半ほどで受験票(葉書)が届きました。
それまで学位授与機構から何の反応もないので、無事に受理されたことが判り、ホッとしました。
受験票には受験番号や会場が記載されています。
4.論文試験の受験
(1)事前準備
論文試験は、自分が書いた学修レポートに基づいて、受験生一人一人異なる問題が出題されます。「卒業論文」に対する「口頭試問」に相当すると考えてください。
したがって、事前準備といっても、論文試験の準備としては学修レポートや引用した参考文献を何度も読み返し、どこから出題されても何かが書けるようにするくらいです。
但し、事前にネットで仕入れた情報によれば、学修レポートの出来が悪いと、提出した学修レポートとは直接関係のない抽象的で、かつ、難解な出題がされる、と聞いていたので、この場合は太刀打ちできないのであきらめるしかありません。
(2)受験日当日
さて、いよいよ重要事項のうち最後の③論文試験となりました。論文試験においては、学修レポートや参考文献を参照することはできません。
東京の試験会場は、学位授与機構の本部(一橋大学小平国際キャンパス内)でした。西武多摩湖線の一橋学園駅で下車し、駅から徒歩10分弱でキャンパス入口に到着します。
学位授与機構は左手のガッシリした建物で、指定された教室(1教室100名程度)に入ります。
机1つに2人座ることになりますが、机は十分広く、隣の受験生はほとんど気になりません。
(3)論文試験
試験が始まり、問題用紙を開くと、提出した学修レポートに関連していることが一瞬でわかりましたので、とりあえず安心しました。
問題は回収されてしまうので、覚えている範囲で記します。
問題の要点については、前述した通り、現時点においても研究中なので伏字にさせていただきます。
(設問1)特許法の〇〇制度について審査基準で解説されている3パターンについて、それぞれ具体的な事例を挙げて説明せよ。
(説明2)特許法の〇〇制度が科学技術に与える影響について説明し、具体的な〇〇制度のケースについて当てはまるかを説明せよ。
設問1については、事例そのものが仕事に直接関連あることなので、難なく記載できました。設問2が少し予想外で難しかったものの、今回の学修レポートの主旨なので何とか纏めることができました。周囲は途中で終わった雰囲気を出す人が多かったものの、私は時間いっぱいかかりました。
5.合否発表
(1)合否発表日程
試験後に発行される学位授与機構のニューズレターである機構ニュース(毎月末に発行、公式サイトでダウンロード可)にて、学位審査会の日程(試験後、約2か月後)が公表されました。
この日が合否通知の発送日になると思われます。
(2)合格通知
学位審査会の日の翌日に合格通知が宅配便で届きました。不在だったので郵便局まで取りに行きましたが、受取時に包みが分厚い(学位記が入っている)ので合格であることを確信しました。
なお、不合格の場合は、不合格通知の紙だけなので薄いはずです。これで、学士(学芸-科学技術研究)が取得でき、所期の目的が達成されました。
(3)機構長緑秀賞の受賞
合格通知を受け取ってから、9ヶ月が経ったある日、学位授与機構から宅配便が届きました。
既に学士(学芸)は取得しており、何もないはずなのになぁ…まさか取消?…とビクビクしながら封を開けると、なぜか成績優秀ということで「表彰」していただけるとの通知でした。
学位授与機構の竹橋オフィス(千代田区)で開催された学位取得者表彰式に出席し、表彰状と記念品をいただきました。表彰者は私を含めて2名で、表彰式の後にランチを食べながら機構長や理事等と意見交換及び懇談しました。
別の日になりますが、「大学改革支援・学位授与機構で学士の学位取得をめざす方への説明会」に学位取得経験者として呼ばれ、少し話をさせていただきました。また、相談会にも出席して申請予定者の相談に応じました。
6.まとめ
ということで、長々と学位授与機構での学位取得の経緯を説明しましたが、いかがだったでしょうか。
私にとっては新しい学問領域に挑戦でき、その成果が認められたということで、充実感が得られました。
学位授与機構における学士号の取得から時間も経って、システム等も変更があったようですが、本質的な部分は変わっていないので、参考にしていただければ幸いです。
また、何かご質問等があれば遠慮なくお問合せいただければと思います。